最強王子とフェンス越しの溺愛キス
ガシャン
「ねえ、君の名前を教えて」
フェンス越しに、器用に手を摑まえられた私。
ドキンと跳ねた心臓を、制服の上からギュッと押さえた。
「み、つき……立花 美月(たちばな みつき)」
必死に名前を紡ぐ。だけど、
震えた口から出た声は、やっぱり震えていて。自己紹介もまともに出来ないなんて、高校生にもなって恥ずかしいよね。
でも不思議なことに。男の人は私をバカにしなかった。決して。
むしろ、私が名乗った事にすごく安心してるように見えた。たぶん気のせいだろうけど、でも。
「美月か」と私の名前を反復した時の男の人の顔が、頭から離れない。
まるで探し物でも見つけたような、嬉しそうな顔だったから。
「俺は、春風 生吹(はるかぜ いぶき)」
「はるかぜ、いぶき……」
「そう。生吹って呼んで。俺も美月って呼ぶから」