最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「生吹くんも、一緒に……。じゃないと、嫌……っ」
「美月……」
申し訳なさそうな声を出した生吹くん。
だけど、「あーあ」と私のすぐ横で、新たな声が聞こえた。
「こんな美人を捕まえて、悪い奴だな生吹」
「一輝……どういう意味だよ、それは」
「美人さん、こいつね例え百人が相手でもしれっと帰ってくる奴だから、心配するだけ無駄無駄。
こんな人数、屁ともないぜ?だから俺と行こ」
「美月の前で”屁”とか言うな」
「へいへい」
私が「え」とか「あの」と言っている間に、二人の会話はテンポよく進む。
だけど、今二人が言っているのは……私を早くここから逃がす、ということ。
「(生吹くん……っ)」
三十人くらいいるのかな……。ざっとしか見れなかったけど。
でも……。
「後で、話したいこと、あるの……」
「うん」
「だから絶対、戻ってきて、ね……っ?」
私は、信じるしかない。
「うん、分かった」
そう言って笑うこの人を、信じるしかないんだ。
それが今の私の、唯一の出来る事だろうから――