最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「じゃあ一輝、頼んだ。美月の手はもう自由にしてあるから」
「へいへい、いつもながら早い手さばきで」
私は自分の手が自由に動けるのを、今知った。
あれ……?いつ、拘束が解けたんだろう……?
全然分からなかった……。
一輝くんに支えられて、その場に立つ。
「歩けそう?」と言われた。
本当はフラフラするけど、ここは、歩けなくても「走る」くらいは答えないと、ダメだよね……っ。
「たくさん、走れる……から、気にしないで……っ」
「ひゅう、良いねぇ。美人さん」
生吹くんを盾にするように、私たちは壁伝いにジリジリと移動をする。
そうして、やっとドアの近くまで来れた時。一緒に移動していた生吹くんが「一輝」と名前を呼んだ。
「一つだけ言っておく。美月を好きになるなよ」
「おま……もっとあるだろ、普通」
呆れたように一輝くんが言うと、生吹くんは少し考えた素振りをして私たちをチラリと見た。
そして、
「頼んだ」
それだけ言って、倉庫のドアを、自らの手で閉めたのだった。