最強王子とフェンス越しの溺愛キス
「あ、あの、」
「はい、ココア。熱いから。気を付けてな」
「あ、ありがとう……?」
も、もう注いできたんだ……。
一輝くんのスピードの速さに、どこまでも置いてけぼりを食らう私。
だけど、言われるがままに席に座り、言われるがままにココアを口に含んだ。
「(あ、甘くておいしい……)」
ふわっと、口の中が満たされて、そして神経を伝って脳へ。
今までガチガチに張りつめていた緊張の糸が、今やっと、少しずつほどけて来た。
カチャン
飲みかけで、カップを置く。
なんか、色々、溢れてきて……。
一体、今まで自分は、何がどうなっていたっけ……と、今更ながらに混乱してきて。
ココアの優しい甘さと、ほどよい熱さが、これほど体に沁みる日が来るなんて……。
「……泣いていいんだぞ」
「え」
「怖かったろ、色々」
「……う、ん」