最強王子とフェンス越しの溺愛キス


だけど、生吹くんは「こういう事だよ」と言って、私の手を掴む。

そしてゆっくりと、自分の心臓にあてた。



「!」



ドクドクドクドク――



生吹くんの心臓が、ありえないくらいの速さで鳴っていた。

すごく速くて、力強い……。



「あ、の……これ……っ」

「ごめん、俺は……隙あらば美月を自分の腕の中に閉じ込めたいって、そう思ってるんだ」

「え、」



暗闇だから分かりにくい。けど、車のヘッドライトが私たちを照らした時。

生吹くんの顔が、赤く染まっていることに、初めて気づいた。



「美月と手を繋いで、隣で歩いてるだけで、俺の心臓はこうなる。

でも俺は、美月を抱きしめたいと思うし、昼みたいにキスしたいとも思う」

「ッ!」

「だから俺を止めるブレーキ役として、フェンスがあってちょうどいいなって。
さっきのは、そういう意味だよ」

「そ、なん、だ……っ」



困ったように喋る生吹くんの顔を、直接見る事が出来ない。だって、さっきのって、まるで……



「(告白、みたい……っ)」



さっきの生吹くんに負けない速さで、私の心臓も脈を打ち始めた。

頭がボーッとするのは、上手く酸素が吸えていないのかな……?

ふわふわして、とても心地よくて。生吹くんの隣は、不思議といつも落ち着く。


< 97 / 447 >

この作品をシェア

pagetop