最強王子とフェンス越しの溺愛キス
だけど、生吹くんは「こういう事だよ」と言って、私の手を掴む。
そしてゆっくりと、自分の心臓にあてた。
「!」
ドクドクドクドク――
生吹くんの心臓が、ありえないくらいの速さで鳴っていた。
すごく速くて、力強い……。
「あ、の……これ……っ」
「ごめん、俺は……隙あらば美月を自分の腕の中に閉じ込めたいって、そう思ってるんだ」
「え、」
暗闇だから分かりにくい。けど、車のヘッドライトが私たちを照らした時。
生吹くんの顔が、赤く染まっていることに、初めて気づいた。
「美月と手を繋いで、隣で歩いてるだけで、俺の心臓はこうなる。
でも俺は、美月を抱きしめたいと思うし、昼みたいにキスしたいとも思う」
「ッ!」
「だから俺を止めるブレーキ役として、フェンスがあってちょうどいいなって。
さっきのは、そういう意味だよ」
「そ、なん、だ……っ」
困ったように喋る生吹くんの顔を、直接見る事が出来ない。だって、さっきのって、まるで……
「(告白、みたい……っ)」
さっきの生吹くんに負けない速さで、私の心臓も脈を打ち始めた。
頭がボーッとするのは、上手く酸素が吸えていないのかな……?
ふわふわして、とても心地よくて。生吹くんの隣は、不思議といつも落ち着く。