誰か僕に気がついて
10月8日

部活は休んだ

夕方からずっと部屋で
寝ていた
体がめちゃめちゃだるかった

「ごはんだよ」
ドアの向こうで
母さんの疲れた声がした

食欲はなかったけど
仕方なく台所にいった

「ゲッまたこの肉かよ!」

週に何回か母さんのスーパーの
味付け肉だ

「文句があるなら
食べなくてけっこうだよ!」

母さんは立ち上がって
手を伸ばし
皿ごとゴミ箱に捨てた

「ふざけんなよ!」

「ふざけてるのはそっちだろ!

のこのこ顔出したと思えば
ブツブツ文句つけて
この頃のアンタはまるで
犬か猫だよ
いや、それ以下だね」

僕は頭の中がキレそうだった

「疲れてんだよ!
この家にいると
やたら疲れんだよ!」

無視してごはんを食う
母さんの姿に
腹が立って
どうかなりそうだった

「てめえのその顔が
いちばんムカつくんだよ!」

まな板の上の包丁に目が止まった

僕の中から
恐ろしい気持ちが
突き上げてきた

けど、必死でおさえた

一瞬の間に
ふたつの心が闘っていた

「母親なら食事くらい
まともに作れ!」

僕は思い切り
テーブルを蹴っ飛ばした

部屋に戻っても
悔しくて手が震えた


10月18日

今日は部活で試合の日だ

面倒くさくて迷っている

土曜で母さんがいるし
家にいたくない

シャケを焼いてるにおいがした

昨日の夜
あれほど弁当作りに
文句を言ってたくせに・・

小さい頃、母さんの作る
シャケおにぎりは
めちゃめちゃおいしかった

でも、最近
疲れた顔で作っている
弁当なんて食べる気がしない

金さえくれれば
コンビニで買う方が
よほど気楽だ

「あのさ、もう弁当なんて
作らなくていいから
金ちょうだい!
うまいやつ自分で買うから」

シャケを焼く
母さんの背中に向かって
僕は言った

母さんは思い切り
テーブルをたたき
黙って台所から出て行った


正直、息苦しかった・・













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