誰か僕に気がついて
12月8日

部活はやめた

もう誰とも話をしたくない

勉強もまるでやる気がしない

でもひとつだけ希望があった

アーティストを目指して
専門学校に行くことにした

調べたらけっこう金がいる

でも一生懸命貯めれば
行けなくはない
バイトを探すことにした

部活をやめたことで
母さんは学校から
呼び出された

先生から色々言われたに
ちがいない

帰ってくると
母さんは突然玄関で泣き崩れた

「もう、何もかもから
開放されたい・・これ以上
母さんを苦しめないで!
父さんの入院は長引くし
頭がへんになりそう」

僕の足元で
ひたすら泣く母さんの
背中が小さく見えた

かわいそうだと思った

だけど、僕だって泣きたかった

僕は唇をかんで
ひたすら我慢した


12月12日

今日父さんの手術があった

手術室の前で久しぶりに

母さんと沙知と並んで座った

父さんの兄貴にあたる人が来た
見たことがないような
おじさんだった

母さんは笑顔で駆け寄った
「あの人にお金を
借りるらしいよ!」

沙知が教えてくれた

なるほど金持ちのような
顔をしていた

母さんがぺこぺこしてる姿に
なぜか腹が立った

夜の11時に手術は終わった

医者の話だと
父さんの職場復帰は
無理らしい

みんな愕然とした

後遺症も残ると聞き
母さんはベンチに座ったまま
動こうともしなかった

僕は何もかも
おしまいだと感じた









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