春の花咲く月夜には
「・・・う、うん。じゃあ、ちょっとお待ちください・・・」
嫌ではなかった。
緊張しつつ、カバンの中でスマホはどこかとゴソゴソ探す。
するとその時、「サクヤ!」と、大通りから彼を呼ぶ声がして、彼と2人で声の方を振り返る。
「もう!どこに行ったかと思ったら・・・、芝さん、サクヤのこと探してたよっ」
言いながら、2人の女の子が近づいてきた。
一人は、はっきりとした顔立ちの、金髪のロングヘアの女の子、もう一人は、黒マスクをつけた全身黒づくめの服に黒髪の、おかっぱヘアの女の子。
「え?ああ・・・、芝さん、来てたのか」
「もう・・・、来てたのかじゃないわよ!出待ちしてる子たちもたくさんいるし、みんな、サクヤのこと待ってるんだから!」
金髪の女の子が彼に言う。
女の子はずいぶん年下のように見えるけど、この感じ・・・、もしかして、彼女だろうか。
(あれ・・・?というか、この子、さっきのライブで一番初めに出てたバンドのボーカルの子だ・・・)
黒づくめの子の方は、ベースを弾いていたような。
何気なく女の子たちを見ていると、金髪の子がキッ!ときつく私を睨んだ。
「ちょっとそこの人!勝手にサクヤを連れ出さないで!」
「えっ!?」
(つ、連れ出したわけでは・・・)
「亜莉沙、違うって。この人はオレが・・・」
「・・・っ、もういいわ!いいからとにかく早く行こ!」
そう言って、金髪の子は彼の腕に手を絡め、急かすように引っ張った。
彼は「ちょ、待って」と、なんとか金髪の子をなだめると、私に封筒を差し出した。
「とにかくこれは返すから。また、待ってます」
「えっ、ちょっ・・・!」
「もう!サクヤ、行くよ!!」
もう待てない、というように、金髪の子が彼をグイグイ引っ張っていく。
私は思わず封筒を受け取ってしまったけれど、これでは、ライブに来る前とほぼ変わらない状況になってしまった。
(今日は、チケット代を渡すことが大きな目的だったんだけど・・・)
それがまるまる返却された。
一緒に入れていたコーヒー代に関しては、さっき彼が飲んだコーヒー代の150円分が減っただけ。
嫌ではなかった。
緊張しつつ、カバンの中でスマホはどこかとゴソゴソ探す。
するとその時、「サクヤ!」と、大通りから彼を呼ぶ声がして、彼と2人で声の方を振り返る。
「もう!どこに行ったかと思ったら・・・、芝さん、サクヤのこと探してたよっ」
言いながら、2人の女の子が近づいてきた。
一人は、はっきりとした顔立ちの、金髪のロングヘアの女の子、もう一人は、黒マスクをつけた全身黒づくめの服に黒髪の、おかっぱヘアの女の子。
「え?ああ・・・、芝さん、来てたのか」
「もう・・・、来てたのかじゃないわよ!出待ちしてる子たちもたくさんいるし、みんな、サクヤのこと待ってるんだから!」
金髪の女の子が彼に言う。
女の子はずいぶん年下のように見えるけど、この感じ・・・、もしかして、彼女だろうか。
(あれ・・・?というか、この子、さっきのライブで一番初めに出てたバンドのボーカルの子だ・・・)
黒づくめの子の方は、ベースを弾いていたような。
何気なく女の子たちを見ていると、金髪の子がキッ!ときつく私を睨んだ。
「ちょっとそこの人!勝手にサクヤを連れ出さないで!」
「えっ!?」
(つ、連れ出したわけでは・・・)
「亜莉沙、違うって。この人はオレが・・・」
「・・・っ、もういいわ!いいからとにかく早く行こ!」
そう言って、金髪の子は彼の腕に手を絡め、急かすように引っ張った。
彼は「ちょ、待って」と、なんとか金髪の子をなだめると、私に封筒を差し出した。
「とにかくこれは返すから。また、待ってます」
「えっ、ちょっ・・・!」
「もう!サクヤ、行くよ!!」
もう待てない、というように、金髪の子が彼をグイグイ引っ張っていく。
私は思わず封筒を受け取ってしまったけれど、これでは、ライブに来る前とほぼ変わらない状況になってしまった。
(今日は、チケット代を渡すことが大きな目的だったんだけど・・・)
それがまるまる返却された。
一緒に入れていたコーヒー代に関しては、さっき彼が飲んだコーヒー代の150円分が減っただけ。