春の花咲く月夜には
過去と今
高校を卒業した後に、元村先生と再会したのは大学2年・・・、成人式の日のことだった。


成人式を終えた後、着物から服に着替えて中高時代の友達みんなで集まって、お祝いに、と、居酒屋に足を踏み入れた。

初めてのお酒。

大人が来る場所。

みんなで飲んで、色々なことを沢山話した。

まるで高校生に戻ったように、あの頃のまま、変わらない。

「ね、心春は大学で彼氏できた?」

隣に座っていた仲原伊織(なかはらいおり)に、うきうきと声をかけられた。

けれど私は、「ううん」と苦笑しながら首を振る。

「できる気配すらないよ。伊織は?」

「できましたよ~!いっこ上の先輩でね、結構モテる人だから頑張った!」

「お〜、そうなんだ!すごい、さすが伊織」

伊織は明るくてかわいくて、とても行動力があるタイプ。

中高時代はバスケ部の部長だったこともあり、部活一筋だったけど、大学では「絶対に彼氏を作る!」と言っていたから、まさに有言実行だ。

「心春、もし彼氏欲しいならうちの彼氏に頼もうか?合コンとかさっ」

「・・・うーん・・・、ううん。合コン、行ってみたことはあるんだけど・・・、すごく疲れて。ちょっともう、いいかなって思ってる」

「あ~、まあ、そうだね、心春は確かにああいうノリ苦手かもしれないねえ」

言いながら、伊織は私ににやにやとした視線を送る。

なんとなく、嫌な予感。

「まさか、まだ元村先生のことが好きだったりとかしないよね?」

「!」

「うわ、マジで!?」

「ち、違う!さすがに、もう大学生だし」

「ほんとに~?けど、会えたら嬉しい?」

「・・・うん・・・、それはまあ・・・」

「よしっ、そしたら今日は、心春にも喜んでもらえるかもー!」

伊織がそう言った時、遠くから、聞き覚えのある声がした。

大好きだった、あの声だ。

「いやー、悪い!遅くなった〜」
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