明日翔くんの求愛行動は間違っている


 私は、ソファから立ち上がった。


 絶望の縦線が顔じゅうを覆い

 笑顔なんて作れない。
 

「先生に頼んで……

 席を変えてもらうから……」


 私の口から吐き出される声は、低すぎ。


 まるで地を這うゾンビのよう。



「いきなり何?
 なんで席替えなんか頼むわけ?」


「明日翔くんの隣の席だから
 嫌がらせを受けているの……」


「誰に?」


「わからない……」


「花湖がイジメられてるってこと?
 違うよな?

 花湖を嫌う奴なんて
 この高校には一人もいないと思うけど」



 推しからの嬉しい言葉。

 ……の、はずなのに。


 心が闇に落ちていくのは、どうしてだろう?


 悲しみが、拭いきれない。

< 117 / 288 >

この作品をシェア

pagetop