明日翔くんの求愛行動は間違っている


 私のことを心配して

 表情を陰らせている成瀬くん。


 笑顔になって欲しくて、私は声を躍らせた。


「私ね、お昼休みは
 演劇の台本を覚えたいんだ」


 瞳がなくなるほどの

 ニッコリ笑顔を添えて。



「よく台本を読んでいるよね?
 雛形さんは
 どこかの劇団に入っているの?」


「入ってない、入ってない。
 演技は独学だよ。

 夜に一人で練習するために
 昼休みに覚えているだけ。

 でもさすがにここじゃ
 集中できないからね……アハハ~」



 明日翔くんを囲む女子達の

 キャーキャー声。


 実は、それほど気にならない。

 むしろ、集中力強化のために

 ずっとキャーキャー言って欲しいくらい。


 お昼休みに教室にいたくない

 本当の理由は……


 しんどいんだぁ。

 明日翔くんの近くにいることが。

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