明日翔くんの求愛行動は間違っている
「さぁ、早く入って」
ひぃあい?
明日翔くんに
手首を引っ張られているよ。
脳みそポカン状態の私。
足だけを何とか動かし、理事長室の中へ。
理事長室なんて、初めて入ったよ。
実は私、理事長が誰なのかも知らないの。
さすがに、校長先生はわかるよ。
全体集会のたびに壇上で長々と話す人。
目に映る時間が長いし。
でも、理事長は見たことがない。
名前すら知らない。
どうせ、私のおじいちゃんくらいの
ご老人なんだと思うけど。
明日翔くんは、掴んでいた私の手首を
パッと放した。
ドアを閉め。
ガチャリ。
ドアの鍵まで閉められたことに
私の心臓がドギマギと
うるさい音をたてる。