飛べない私がもらった翼
私が言い終わるまで、彼は静かな目をして聞いてくれていた。教室は騒がしいはずなのに、私たちの周りだけは、静かに感じた。周りの声は、耳に届かなかった。橋本くんに私の声が届いてほしい、それだけに集中していたから。
そして、私が口を閉ざすと、3秒くらいしてから、

「…良かった…」

と彼は小さく声を発した。

「俺昨日、桜庭さんに質問攻めみたいなことしちゃって、本当に悪かったなって反省してる。だから、こちらこそ、ごめん。で、多分怒ってる感じに聞こえたと思うんだけど、俺は別に、怒ってないから。嫌な気持ちにもなってない。言い方悪くて誤解させてたらごめん。ただ、迷惑なことしたかなって思って自分に腹立ってただけ。」

そこまで一気に言うと、彼はふうっと息をついた。
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