嫌われ大作戦!!
嫌われ大作戦!!
1 プロローグ
渡辺大地 25歳。私立大学を卒業後は医療機器メーカーの営業マンをしている。
高校2年生の頃から付き合っている優里と昨年、めでたく結婚をした。
高校を卒業後、大地は優里と同じ大学に進学して同棲を始めた。
大学に進学してからの大地と優里はバイトは違うが、なるべく一緒の時間になるよう工夫をして二人の時間を設けながらも愛を育んだのだった。
大学を卒業して数ヶ月が経ち、就職した会社の仕事にも慣れた大地と優里は結婚をしたが、その結婚が大地にとって優里の気持ちが痛いほど分かる日が待ち受けているとは想像もしていなかった。
優里の態度が急変したのは大地と結婚をして1年が経とうとしていた頃だった。
大地がいつも通り会社に行こうと玄関に向かった。
しかし、いつもなら優里が玄関で弁当箱を持って大地に「今日も頑張って!」と労いの言葉を掛けながら渡すのだが、その日の優里は玄関に来なかった。
大地は「今日は体調が悪いのかな?」と思い、リビングにいる優里に「じゃ、行ってくる」と冷たく言って家を出た。
この日を境に優里は大地に弁当を渡すどころか、玄関にも姿を見せなかった。
しかし数日後、大地が会社に行こうと玄関に向かうと笑顔で優里が弁当を渡してきた。
大地が「あ…ありがとう…」と言うと、優里は「気をつけていってらっしゃい!」と言ってリビングに戻ってしまった。
リビングに戻る優里を見ながら大地は「い…行ってきます…」と言って、家を出た。
大地が家を出る所を優里は少しだけ開けておいた扉から覗き込み、小さい声で「バカッ…」と呟いた。
この時点で大地はまだ、優里の気持ちなど全く分かっていなかった。
2 相談
優里が見送りをする日としない日が交互に続いてから1年が経ち、大地は会社の同僚である遠藤友樹に相談をした。
大地 「なぁ…最近さ、嫁の気持ちが分からないんだよ…」
友樹 「お?なんだ?お惚気話か?」
大地 「ちげぇよ…真剣な話をしてんだよ…」
友樹 「ごめんごめん笑」
大地 「はぁ…」
友樹 「そんなことで落ち込むなって!結婚したら人格変わるって聞くしな」
大地 「でもさ、たった1年で態度変わるのおかしくないか?」
友樹 「それは、人それぞれ笑気にすることないって!」
大地 「お前はいいよな…独身で…
だから、そんなこと言えるんだよ」
友樹 「俺はお前と違って彼女がいないから笑
だから、こんなにのびのびと仕事したり趣味の野球観戦をしたりしてるってわけ」
大地 「いいよな…独身は」
友樹 「なんだよ…お前…奥さんのこと嫌いなのか?」
大地 「いや…嫌いじゃない…けど…」
友樹 「けど?」
大地 「最近、嫁の気持ちが分からねぇんだよ…」
友樹 「まぁ…日が経ったら分かるんじゃね?」
大地 「そうかな…」
友樹 「きっとそうだって!」
大地 「……」
友樹は納得してない顔をしている大地を見て
「なぁ…今日、一緒に飲みに行くか!」と言いました。
大地が「あぁ…」と言うと、友樹に「一応、嫁にも伝えておくよ」と言ってLINEで帰りに友樹と飲みに行くことを伝えた。
一方、優里は同僚の藤前渚に相談をしていた。
優里 「ねぇ…渚?」
渚 「ん〜?何〜?」
優里 「最近さ…うちの旦那が冷たいんだよね…」
渚 「どこの家庭でもそうじゃない?」
優里 「そう?」
渚 「優里って今の旦那さんと結婚をしてどのくらい経つの?」
優里 「え…?1年くらい…かな…」
渚 「たったの1年でしょ?考えすぎだって!」
優里 「そうかな〜?」
渚 「きっとそうよ!」
優里 「う〜ん…」
渚 「納得してない顔をしてる…」
優里 「そりゃ、そうだよ!」
渚 「何か根拠はあるの?」
優里 「根拠は…女の勘よ!」
渚 「はぁ?何が女の勘よ!考えすぎよ!考えすぎ!」
優里 「……」
優里は黙ってしまった。
黙ってしまった優里を見かねた渚は優里に
渚 「ねぇ…優里」
優里 「何?」
渚 「私、いいこと思いついたの」
優里 「いいこと?」
渚 「そう!まぁ…実験なんだけど、あえて嫌われてみたら?」
優里 「あえて嫌われる!?」
渚 「そう!題して「嫌われ大作戦!」」
優里 「嫌われ大作戦って…どんな作戦なの?」
渚 「優里って毎朝、旦那さんのために弁当を作ってるでしょ?」
優里 「うん…」
渚 「その弁当をあえて作らないの!」
優里 「え?」
渚 「それを毎日続けるだけ。だけど、毎日続けると「嫌われ大作戦」じゃなくなるから数日に分けて弁当を作って旦那さんに渡すの!
それで、旦那さんの様子を見るの!いい考えじゃない?」
優里 「う〜ん…いい考えだけど…それだけで嫌われるの?」
渚 「まぁ…他にも嫌われ大作戦は用意しとくから!先ずは明日の朝は弁当を作らないこと!いいね!?」
優里 「わ、分かった…」
渚の凄みに慄いた優里は渋々、承諾した。
数日間、優里は渚に言われた通りに作戦を実行に移した。
数日間に及ぶ渚が考えた「嫌われ大作戦」の近況報告をする為、優里と渚は会社近くのレストランでランチをしながら話をすることにした。
椅子に座るなり、渚が聞いた。
渚 「どう?順調?」
優里 「うん…順調だけど…」
渚 「何?まだ、腑に落ちないの?」
優里 「うん…本当に大丈夫かなって…」
渚 「大丈夫だって!それで、旦那さんの様子はどう?」
優里 「う〜ん…最初は不思議がってたけど、普段と変わらなくなったかな…」
渚 「でも、弁当を渡したりしてるんでしょ?」
優里 「うん…弁当を渡すと、「あ、ありがとう…」って…ちょっと驚いてたかな…」
渚 「いい一歩じゃん!」
優里 「え?」
渚 「これも、作戦の一つよ!「あぁ…今日も弁当渡されなかった…」って落ち込ませて、いきなり弁当を渡したら嬉しかったりするのよ!」
優里 「そ、そうかな…?」
渚 「そうよ!それじゃ、次の「嫌われ大作戦」ね!」
優里 「え?まだ、あるの?」
渚 「何言ってるの?あるに決まってるじゃない!次はね…」
と言って、渚は優里に次の「嫌われ大作戦」の内容を伝えた。
優里が渚から「嫌われ大作戦」の内容を聞いている間、優里のスマホに大地から夜に大地の同僚である友樹と飲みに行くという旨のLINEが届いていた。
3 すれ違い
大地が家に帰宅すると、テーブルの上にはA4のコピー用紙に「夕飯は自分で作って食べて」と書かれていた。
いつもなら、優里が夕飯を用意して大地が帰ってくるまで待ってくれていた。
しかし、今日の優里はいつもと違うと大地は感じていた。
見送りに来なかったり、夕飯を作らなかったりといつもやってくれることを急にしてくれなくなったことに対して大地は困惑していた。
大地はリビングにあるソファに座りながらテレビを見ている優里に対して
「何故、見送りをしないんだ?」
「何故、夕飯を作らないんだ?」
と、問い詰めようと一瞬だけ考えた。
しかし、その2つの理由だけで優里に怒ったりしたら愛想を尽かされて離婚届を出されるんじゃないかと考えた大地は一旦、様子を見ることにした。
仕事から帰ったばかりで作る気力がなかった大地は仕方なく、出前を頼むことにした。
スマホのアプリで食べたい商品を注文すると、画面には「35分で届きます」と表示されていた。
スマホで注文を済ませると、大地は出前が来るまでの35分の間に風呂に入ることにした。
バスタオルと着替えの用意をした大地はリビングにあるソファに座りながらテレビを見ている優里に向って
「おーい、今から風呂に入る」
と伝えると、優里は無視をした。
無視をする優里に大地は小さい声で「っんだよ…無視かよ…」と呟いて、バスルームに向かった。
バスルームに向かう大地を優里はテレビを見てるフリをしながら、小さな声で「バカッ…」と呟いた。
4 衝突
渚の次なる「嫌われ大作戦」の内容はこうだ。
いつも大地に夕飯を作っている優里だがあえて、優里が夕飯を作らずに大地に夕飯を作らせて優里が毎日、大地のためにメニューを考えて夕飯を作っていることを大地に分からせてやろうという内容だった。
渚の次なる「嫌われ大作戦」の内容を聞いた優里は訝しげな顔をした。
訝しげな顔をする優里を見て渚は聞いた。
渚 「何?まだ、腑に落ちてないの?」
優里 「うん…」
渚 「この前の作戦はうまくいったじゃない!」
優里 「あれは…たまたまよ…」
渚 「たまたまって…じゃあ、優里はどうしたいの?」
優里 「私は…もちろん、今まで大地が私に対して冷たい態度をとった理由は知りたいよ?でも…」
渚 「でも?」
優里 「でも、もしも「嫌われ大作戦」を続けて本当に嫌われたらどうしようって考えちゃうの!」
渚 「だから、数日に一回は弁当を作ったり夕飯を作ったりしてるんでしょ?」
優里 「数日に一回だけでしょ!?そんなんで大地が「今まで、そんな辛い気持ちで暮らしてたのか…俺が悪かった」って言うと思う?」
渚は黙ってしまった。
渚は黙ってしまったが、優里は続けた。
優里 「ねぇ…もし、大地が離婚を切り出したら、どう責任をとってくれるの!?」
渚 「優里…落ち着いて。考えすぎだって!」
優里 「落ち着いてるわよ!大体…彼氏もいない、結婚もしてない渚に私の気持ちなんか分かるわけない!」
渚 「分からないわよ!でも…」
優里 「でも?」
渚 「でも…困ってる優里を助けたい!その気持ちは変わらないわ!そりゃ、彼氏もいないし結婚もしてない。だけど、独身でも助けることはできるはず!」
渚は力説した。
そして、渚は続けた。
渚 「そりゃ、優里の気持ちも分かるよ?だって、女の子だもん!
9年弱も一緒に居たら誰だっていつかは「俺たち、別れよう…」って言われるんじゃないか?という不安に襲われる。私もあったもん」
優里 「え!?渚、付き合ってたっけ?」
渚 「違うわよ!高校時代の話!」
優里 「そうだっけ?」
渚 「あ…優里には話してなかったね…
優里と知り合う前までは付き合ってたんだ…
まぁ…たったの1ヶ月だけだけど…」
優里 「そうだったんだ…」
渚 「優里の気持ちも分かる。それに…」
優里 「それに?」
渚 「それに、私は優里のおかげで変われたの!
だから、次は私が優里の役に立ちたいの!」
渚の言葉を聞いて優里は溜め息をついた。
優里 「はぁ…分かったわ。渚が考えた作戦、続けましょう」
渚 「ほんと!?やった!」
渚は喜んだ。
そして、渚は優里に次なる作戦の内容を伝えた。
優里と渚が知り合ったのは高校3年生、同じクラスになってからだ。
ちなみに、最初に声を掛けたのは優里からだった。
渚は極度の人見知りで最初は優里と目を合わせることもできなかったが、今では百貨店の化粧品売り場で接客の仕事をしている。
渡辺大地 25歳。私立大学を卒業後は医療機器メーカーの営業マンをしている。
高校2年生の頃から付き合っている優里と昨年、めでたく結婚をした。
高校を卒業後、大地は優里と同じ大学に進学して同棲を始めた。
大学に進学してからの大地と優里はバイトは違うが、なるべく一緒の時間になるよう工夫をして二人の時間を設けながらも愛を育んだのだった。
大学を卒業して数ヶ月が経ち、就職した会社の仕事にも慣れた大地と優里は結婚をしたが、その結婚が大地にとって優里の気持ちが痛いほど分かる日が待ち受けているとは想像もしていなかった。
優里の態度が急変したのは大地と結婚をして1年が経とうとしていた頃だった。
大地がいつも通り会社に行こうと玄関に向かった。
しかし、いつもなら優里が玄関で弁当箱を持って大地に「今日も頑張って!」と労いの言葉を掛けながら渡すのだが、その日の優里は玄関に来なかった。
大地は「今日は体調が悪いのかな?」と思い、リビングにいる優里に「じゃ、行ってくる」と冷たく言って家を出た。
この日を境に優里は大地に弁当を渡すどころか、玄関にも姿を見せなかった。
しかし数日後、大地が会社に行こうと玄関に向かうと笑顔で優里が弁当を渡してきた。
大地が「あ…ありがとう…」と言うと、優里は「気をつけていってらっしゃい!」と言ってリビングに戻ってしまった。
リビングに戻る優里を見ながら大地は「い…行ってきます…」と言って、家を出た。
大地が家を出る所を優里は少しだけ開けておいた扉から覗き込み、小さい声で「バカッ…」と呟いた。
この時点で大地はまだ、優里の気持ちなど全く分かっていなかった。
2 相談
優里が見送りをする日としない日が交互に続いてから1年が経ち、大地は会社の同僚である遠藤友樹に相談をした。
大地 「なぁ…最近さ、嫁の気持ちが分からないんだよ…」
友樹 「お?なんだ?お惚気話か?」
大地 「ちげぇよ…真剣な話をしてんだよ…」
友樹 「ごめんごめん笑」
大地 「はぁ…」
友樹 「そんなことで落ち込むなって!結婚したら人格変わるって聞くしな」
大地 「でもさ、たった1年で態度変わるのおかしくないか?」
友樹 「それは、人それぞれ笑気にすることないって!」
大地 「お前はいいよな…独身で…
だから、そんなこと言えるんだよ」
友樹 「俺はお前と違って彼女がいないから笑
だから、こんなにのびのびと仕事したり趣味の野球観戦をしたりしてるってわけ」
大地 「いいよな…独身は」
友樹 「なんだよ…お前…奥さんのこと嫌いなのか?」
大地 「いや…嫌いじゃない…けど…」
友樹 「けど?」
大地 「最近、嫁の気持ちが分からねぇんだよ…」
友樹 「まぁ…日が経ったら分かるんじゃね?」
大地 「そうかな…」
友樹 「きっとそうだって!」
大地 「……」
友樹は納得してない顔をしている大地を見て
「なぁ…今日、一緒に飲みに行くか!」と言いました。
大地が「あぁ…」と言うと、友樹に「一応、嫁にも伝えておくよ」と言ってLINEで帰りに友樹と飲みに行くことを伝えた。
一方、優里は同僚の藤前渚に相談をしていた。
優里 「ねぇ…渚?」
渚 「ん〜?何〜?」
優里 「最近さ…うちの旦那が冷たいんだよね…」
渚 「どこの家庭でもそうじゃない?」
優里 「そう?」
渚 「優里って今の旦那さんと結婚をしてどのくらい経つの?」
優里 「え…?1年くらい…かな…」
渚 「たったの1年でしょ?考えすぎだって!」
優里 「そうかな〜?」
渚 「きっとそうよ!」
優里 「う〜ん…」
渚 「納得してない顔をしてる…」
優里 「そりゃ、そうだよ!」
渚 「何か根拠はあるの?」
優里 「根拠は…女の勘よ!」
渚 「はぁ?何が女の勘よ!考えすぎよ!考えすぎ!」
優里 「……」
優里は黙ってしまった。
黙ってしまった優里を見かねた渚は優里に
渚 「ねぇ…優里」
優里 「何?」
渚 「私、いいこと思いついたの」
優里 「いいこと?」
渚 「そう!まぁ…実験なんだけど、あえて嫌われてみたら?」
優里 「あえて嫌われる!?」
渚 「そう!題して「嫌われ大作戦!」」
優里 「嫌われ大作戦って…どんな作戦なの?」
渚 「優里って毎朝、旦那さんのために弁当を作ってるでしょ?」
優里 「うん…」
渚 「その弁当をあえて作らないの!」
優里 「え?」
渚 「それを毎日続けるだけ。だけど、毎日続けると「嫌われ大作戦」じゃなくなるから数日に分けて弁当を作って旦那さんに渡すの!
それで、旦那さんの様子を見るの!いい考えじゃない?」
優里 「う〜ん…いい考えだけど…それだけで嫌われるの?」
渚 「まぁ…他にも嫌われ大作戦は用意しとくから!先ずは明日の朝は弁当を作らないこと!いいね!?」
優里 「わ、分かった…」
渚の凄みに慄いた優里は渋々、承諾した。
数日間、優里は渚に言われた通りに作戦を実行に移した。
数日間に及ぶ渚が考えた「嫌われ大作戦」の近況報告をする為、優里と渚は会社近くのレストランでランチをしながら話をすることにした。
椅子に座るなり、渚が聞いた。
渚 「どう?順調?」
優里 「うん…順調だけど…」
渚 「何?まだ、腑に落ちないの?」
優里 「うん…本当に大丈夫かなって…」
渚 「大丈夫だって!それで、旦那さんの様子はどう?」
優里 「う〜ん…最初は不思議がってたけど、普段と変わらなくなったかな…」
渚 「でも、弁当を渡したりしてるんでしょ?」
優里 「うん…弁当を渡すと、「あ、ありがとう…」って…ちょっと驚いてたかな…」
渚 「いい一歩じゃん!」
優里 「え?」
渚 「これも、作戦の一つよ!「あぁ…今日も弁当渡されなかった…」って落ち込ませて、いきなり弁当を渡したら嬉しかったりするのよ!」
優里 「そ、そうかな…?」
渚 「そうよ!それじゃ、次の「嫌われ大作戦」ね!」
優里 「え?まだ、あるの?」
渚 「何言ってるの?あるに決まってるじゃない!次はね…」
と言って、渚は優里に次の「嫌われ大作戦」の内容を伝えた。
優里が渚から「嫌われ大作戦」の内容を聞いている間、優里のスマホに大地から夜に大地の同僚である友樹と飲みに行くという旨のLINEが届いていた。
3 すれ違い
大地が家に帰宅すると、テーブルの上にはA4のコピー用紙に「夕飯は自分で作って食べて」と書かれていた。
いつもなら、優里が夕飯を用意して大地が帰ってくるまで待ってくれていた。
しかし、今日の優里はいつもと違うと大地は感じていた。
見送りに来なかったり、夕飯を作らなかったりといつもやってくれることを急にしてくれなくなったことに対して大地は困惑していた。
大地はリビングにあるソファに座りながらテレビを見ている優里に対して
「何故、見送りをしないんだ?」
「何故、夕飯を作らないんだ?」
と、問い詰めようと一瞬だけ考えた。
しかし、その2つの理由だけで優里に怒ったりしたら愛想を尽かされて離婚届を出されるんじゃないかと考えた大地は一旦、様子を見ることにした。
仕事から帰ったばかりで作る気力がなかった大地は仕方なく、出前を頼むことにした。
スマホのアプリで食べたい商品を注文すると、画面には「35分で届きます」と表示されていた。
スマホで注文を済ませると、大地は出前が来るまでの35分の間に風呂に入ることにした。
バスタオルと着替えの用意をした大地はリビングにあるソファに座りながらテレビを見ている優里に向って
「おーい、今から風呂に入る」
と伝えると、優里は無視をした。
無視をする優里に大地は小さい声で「っんだよ…無視かよ…」と呟いて、バスルームに向かった。
バスルームに向かう大地を優里はテレビを見てるフリをしながら、小さな声で「バカッ…」と呟いた。
4 衝突
渚の次なる「嫌われ大作戦」の内容はこうだ。
いつも大地に夕飯を作っている優里だがあえて、優里が夕飯を作らずに大地に夕飯を作らせて優里が毎日、大地のためにメニューを考えて夕飯を作っていることを大地に分からせてやろうという内容だった。
渚の次なる「嫌われ大作戦」の内容を聞いた優里は訝しげな顔をした。
訝しげな顔をする優里を見て渚は聞いた。
渚 「何?まだ、腑に落ちてないの?」
優里 「うん…」
渚 「この前の作戦はうまくいったじゃない!」
優里 「あれは…たまたまよ…」
渚 「たまたまって…じゃあ、優里はどうしたいの?」
優里 「私は…もちろん、今まで大地が私に対して冷たい態度をとった理由は知りたいよ?でも…」
渚 「でも?」
優里 「でも、もしも「嫌われ大作戦」を続けて本当に嫌われたらどうしようって考えちゃうの!」
渚 「だから、数日に一回は弁当を作ったり夕飯を作ったりしてるんでしょ?」
優里 「数日に一回だけでしょ!?そんなんで大地が「今まで、そんな辛い気持ちで暮らしてたのか…俺が悪かった」って言うと思う?」
渚は黙ってしまった。
渚は黙ってしまったが、優里は続けた。
優里 「ねぇ…もし、大地が離婚を切り出したら、どう責任をとってくれるの!?」
渚 「優里…落ち着いて。考えすぎだって!」
優里 「落ち着いてるわよ!大体…彼氏もいない、結婚もしてない渚に私の気持ちなんか分かるわけない!」
渚 「分からないわよ!でも…」
優里 「でも?」
渚 「でも…困ってる優里を助けたい!その気持ちは変わらないわ!そりゃ、彼氏もいないし結婚もしてない。だけど、独身でも助けることはできるはず!」
渚は力説した。
そして、渚は続けた。
渚 「そりゃ、優里の気持ちも分かるよ?だって、女の子だもん!
9年弱も一緒に居たら誰だっていつかは「俺たち、別れよう…」って言われるんじゃないか?という不安に襲われる。私もあったもん」
優里 「え!?渚、付き合ってたっけ?」
渚 「違うわよ!高校時代の話!」
優里 「そうだっけ?」
渚 「あ…優里には話してなかったね…
優里と知り合う前までは付き合ってたんだ…
まぁ…たったの1ヶ月だけだけど…」
優里 「そうだったんだ…」
渚 「優里の気持ちも分かる。それに…」
優里 「それに?」
渚 「それに、私は優里のおかげで変われたの!
だから、次は私が優里の役に立ちたいの!」
渚の言葉を聞いて優里は溜め息をついた。
優里 「はぁ…分かったわ。渚が考えた作戦、続けましょう」
渚 「ほんと!?やった!」
渚は喜んだ。
そして、渚は優里に次なる作戦の内容を伝えた。
優里と渚が知り合ったのは高校3年生、同じクラスになってからだ。
ちなみに、最初に声を掛けたのは優里からだった。
渚は極度の人見知りで最初は優里と目を合わせることもできなかったが、今では百貨店の化粧品売り場で接客の仕事をしている。