きみと3秒見つめ合えたなら
 それからも春菜はオレと先輩に忙しく話しかける。

「絢音先輩って、桐谷先輩のこと、苦手ですか?」春菜が相川先輩に聞いていた。

「な、なんで?」
相川先輩は急に聞かれてびっくりしていた。

 小声で2人の会話が聞こえない。
 相川先輩、なんて言ってるんだろ?
 
 オレはスマホを取り出した。

『先輩、オレのこと苦手ですか?(笑)』

 相川先輩にメッセージを送ってみた。
 先輩はメッセージ通知に気づいたようだ。

『1年前は苦手だった』
 返信がきた。
 だよな。あんまり「推し」って言いすぎたかな。

『今は?』
 意地悪な質問。

『それほどでも。』
 なかなか「好き」とは言ってくれないなぁ。でも、「それほどでも」ってことは、少しは希望が持てるかな。

『オレはずっと相川先輩推しなんで。』
 冗談混じりで。
 本当は『推し』なんて言葉では片付けられないくらいに、先輩のことしか見てないんだけど。

『久しぶりに聞いた。』
 相川先輩がスマホを鞄にしまった。
 それだけ?もっとやり取りしたいのに。

 でも、ちょっと幸せな時間だった。
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