きみと3秒見つめ合えたなら
 高校生活の月日が流れるのはとても早い。気がつけば、もう2月。

「バレンタインはどうするの?」
いつもの昼休みに友梨が聞いてきた。

「そんな季節かぁ。そうねぇ。
友梨と美帆と景子とー」

「友チョコの話じゃなくて、男子は?」

「男子?いつもあげてないじゃん?
友梨は先輩に手づくり?」

 すっかり、恋愛からは、再び遠ざかった私はバレンタインに男子にチョコをあげるなんて、考えてもいなかった。

「手づくり...自信ないから買うけどね。」友梨が苦笑いする。

「でも、美味しいチョコいっぱいあるから、買うのも全然アリだよー。」

 私はスマホで流行りのチョコを検索していた。

「ほら、あの子はどうなの?」
友梨が話題を変えて聞いてきた。

「あの子?誰?」

「体育祭で、絢音推ししてた子。」

 久しぶりに意識して、ちょっとドキっとした。

「だからね、あれは体育祭のウケ狙いだよ。失礼よね。恋愛未経験の先輩をからかって楽しむって。他校に美人の彼女もいて、試合にまで応援に来てるんだから。」

 自分でもだんだん強く言ってるのがわかる。思い出したらなんだか、イライラしてきた。

「絢音が怒るの珍しい〜。でも、それは怒っていい!」
友梨は私の肩に手を置いて、うん、うん、とうなずいている。

「でしょ?あげるわけないよ〜。
いいの、私は友梨達と楽しく過ごしたいから。ねぇ、チョコの交換もいいけど、みんなでスイーツブュッフェ行くのもいいよね?」

「いいじゃん、それー。」

「何の話ー?」
サッカー部の昼練から戻ってきた美帆が私たちのところにやって来た。

 それから私たちは、どこのお店がいいだとかで、かなり盛り上がり、お陰で桐谷くんへの、イライラした思いもどこかへ行ってしまった。
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