きみと3秒見つめ合えたなら
バレンタイン当日も部活はあるわけで。
何となく、みんなのソワソワした感じは、恋愛に疎い私でも感じ取れる。
「はい、今日の練習は終わり。暗いし、さっさと片付けて、早く帰れよー。」
ゴンちゃんが本日の練習の終わりを告
げる。
暗いし寒いから早く帰ろう...と思っていたら、景子の声が聞こえた。
「さっさと配っちゃいなよ。みんな帰っちゃうよ、もう。」
「どうしたの、景子〜?」
何か揉めていたような気がしたので、景子のもとへ。
「絢音も配って、ハイ。」
と言って、小さな包み紙を渡される。
「この子たち、男子に義理チョコ渡すのに、迷ってるからー。中学生じゃあるまいし。ハイ、さっさと渡して帰るよ。」
と、背中を押された。
「え?景子、これ茉莉ちゃん達が買ったんじゃ...きゃっ」
振り返って話していたら、暗くて気づかなくて、誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい、見てなくて...」
「すみません。」
声の主は桐谷くんだった。
「もう、それ渡しといて。」
景子が私に言う。
他の子にも指示を出していて、もう私を見てない。
途方に暮れている私に、
「オレ、そういうの、要りませんから。」
桐谷くんが淡々と言った。
「あ、そ、そうだよね。だよね。ごめんねー。じゃ、おつかれさま。」
かなり動揺した私はその場を急いで後にした。
...て、いうか、何なの?
「オレ、そういうの、要りませんから」って。
何も私、桐谷くんに渡したくて行ったわけじゃないのに、なに?この振られたみたいな感じ。
私はまたちょっとイライラして部室に向かった。
「絢音先輩!」途中で後輩に呼び止められた。
「ん?何?」
振り返ると4人の1年がいた。
「あの、これ、早瀬先輩に渡してくれませんか?」
「え?早瀬くん?」
「早瀬先輩に渡したかったんですけど、今日サッカー部、練習が学校じゃなかったみたいで...いつ渡せるかわからないし...」
「私が渡しても明日になるし、自分から渡さなくていいの?」
後輩には悪いんだけど、早瀬くんにそんなの、私は渡せないんだけど。
「バレンタインじゃない日に渡すのって結構勇気いるじゃないですか〜?いらないって言われる可能性だってあるし...絢音先輩から渡してもらったら、とりあえず受け取ってくれそうな気がするんです。お願いします!絢音先輩!」
要らないかぁ...さっき私が言われた言葉だ。
「早瀬くんは要らないなんて言わないと思うけどなぁ。」
「お願いします、先輩〜。」
乗り気ではないけれど、後輩たちも必死なので、とりあえず受けることにした。美帆に渡してもらおう。
「わかった。でも明日になるからね。」
と言って、おそらくチョコレートが入った包み紙を預かった。
はぁ...ため息をつく私。
なにやってんだろ、私。
桐谷くんからは、ふられたみたいに要らないなんて言われるし、早瀬くんに人のチョコを渡さないといけないなんて。
部室に戻った私は仕方なく、美帆にスマホからメッセージを送った。
『後輩から早瀬くんにって、チョコ預かってるの。美帆渡しといてくれない?』
『なにそれ?絢音は?』
『私?なにが?』
美帆の言いたいことはわかる...
『聖斗には渡さないの?ってことよ。』
『なんで、私も渡すのよー。そんなの用意してないし。誤解されちゃうじゃん。とりあえず、後輩の、渡してあげて。お願い!』
強がりな私。本当はその勇気がほしい。
『気乗りしないけど。とりあえず渡すわね。聖斗モテるのよねー』
聖斗くん、たくさんもらってるんだろうな...と思いながらも、あえて触れず
『ありがと』とだけ返信した。
何となく、みんなのソワソワした感じは、恋愛に疎い私でも感じ取れる。
「はい、今日の練習は終わり。暗いし、さっさと片付けて、早く帰れよー。」
ゴンちゃんが本日の練習の終わりを告
げる。
暗いし寒いから早く帰ろう...と思っていたら、景子の声が聞こえた。
「さっさと配っちゃいなよ。みんな帰っちゃうよ、もう。」
「どうしたの、景子〜?」
何か揉めていたような気がしたので、景子のもとへ。
「絢音も配って、ハイ。」
と言って、小さな包み紙を渡される。
「この子たち、男子に義理チョコ渡すのに、迷ってるからー。中学生じゃあるまいし。ハイ、さっさと渡して帰るよ。」
と、背中を押された。
「え?景子、これ茉莉ちゃん達が買ったんじゃ...きゃっ」
振り返って話していたら、暗くて気づかなくて、誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい、見てなくて...」
「すみません。」
声の主は桐谷くんだった。
「もう、それ渡しといて。」
景子が私に言う。
他の子にも指示を出していて、もう私を見てない。
途方に暮れている私に、
「オレ、そういうの、要りませんから。」
桐谷くんが淡々と言った。
「あ、そ、そうだよね。だよね。ごめんねー。じゃ、おつかれさま。」
かなり動揺した私はその場を急いで後にした。
...て、いうか、何なの?
「オレ、そういうの、要りませんから」って。
何も私、桐谷くんに渡したくて行ったわけじゃないのに、なに?この振られたみたいな感じ。
私はまたちょっとイライラして部室に向かった。
「絢音先輩!」途中で後輩に呼び止められた。
「ん?何?」
振り返ると4人の1年がいた。
「あの、これ、早瀬先輩に渡してくれませんか?」
「え?早瀬くん?」
「早瀬先輩に渡したかったんですけど、今日サッカー部、練習が学校じゃなかったみたいで...いつ渡せるかわからないし...」
「私が渡しても明日になるし、自分から渡さなくていいの?」
後輩には悪いんだけど、早瀬くんにそんなの、私は渡せないんだけど。
「バレンタインじゃない日に渡すのって結構勇気いるじゃないですか〜?いらないって言われる可能性だってあるし...絢音先輩から渡してもらったら、とりあえず受け取ってくれそうな気がするんです。お願いします!絢音先輩!」
要らないかぁ...さっき私が言われた言葉だ。
「早瀬くんは要らないなんて言わないと思うけどなぁ。」
「お願いします、先輩〜。」
乗り気ではないけれど、後輩たちも必死なので、とりあえず受けることにした。美帆に渡してもらおう。
「わかった。でも明日になるからね。」
と言って、おそらくチョコレートが入った包み紙を預かった。
はぁ...ため息をつく私。
なにやってんだろ、私。
桐谷くんからは、ふられたみたいに要らないなんて言われるし、早瀬くんに人のチョコを渡さないといけないなんて。
部室に戻った私は仕方なく、美帆にスマホからメッセージを送った。
『後輩から早瀬くんにって、チョコ預かってるの。美帆渡しといてくれない?』
『なにそれ?絢音は?』
『私?なにが?』
美帆の言いたいことはわかる...
『聖斗には渡さないの?ってことよ。』
『なんで、私も渡すのよー。そんなの用意してないし。誤解されちゃうじゃん。とりあえず、後輩の、渡してあげて。お願い!』
強がりな私。本当はその勇気がほしい。
『気乗りしないけど。とりあえず渡すわね。聖斗モテるのよねー』
聖斗くん、たくさんもらってるんだろうな...と思いながらも、あえて触れず
『ありがと』とだけ返信した。