きみと3秒見つめ合えたなら
 茉莉と別れたオレはコンビニで飲み物を買ってホームに上がった。

 30分くらい待っただろうか。
 もしかすると、相川先輩は帰ったかもしれないと思い始めていた。

 あと10分待って来なかったら、帰ろう...と何本目かの電車を見送ったとき、相川先輩がホームに現れた。

 ラッキーなことに一人だった。
嬉しくて、先輩に駆け寄る。

 なんて声をかけよう。
嬉しいくせに、不安な気持ちがあって、意地悪なことを聞いてしまった。

「先輩、聖斗くんところ、行ってたんですか?」
「景子に誘われて。」
先輩はうつむいたまま、答えた。

 やっぱり、オレより聖斗くんなのか。
「ふ〜ん。まだオレより聖斗くんのこと、好きですか?」
先輩の気持ちが知りたくて聞く。
先輩は応えない。

「茉莉ちゃんは?昨日、どうしたかなって。」先輩は話をそらした。

「気になりますか?」
茉莉の話なんて、先輩には関係ない。
オレが好きなのは先輩なんだから。

「オレ、昨日、自分のことで一杯で、茉莉の約束忘れちゃったんですよ。」

「え?行かなかったってこと?」
先輩は我に返った感じで、若干、引いているようにみえた。

「そうなんです。本気で忘れてました。今日、茉莉に怒られました。」

「そうなんだ。」
淡々と相槌を打つ先輩の心の内が読めない。

「で、さっき呼び出されて。オレが好きだって告白されました。」
隠さずに全部言おう。

「オレ、はっきり言いました。もうエリみたいに誤解されても嫌なんで。
好きな人がいるって。茉莉のことは恋愛対象として見たことないし、これからもないって。」

「...なかなかキツいこと言うね。」
先輩はどこか他人事だ。かなり前後を省いて先輩には言ったから、キツく聞こえるかもしれないが、実際は、茉莉のことは円満に解決している。

「先輩、茉莉のこと心配してますけど、オレの好きな人は相川先輩ですからね。」
沈黙がつづく。
やっぱり、オレのこと、迷惑なのかな。

『電車が参ります。お気をつけください。』
電車がホームに入ってきた。
だんだんと、電車を待つ人が増えてきていた。
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