stalking voice〜その声に囚われました~



『何にしても、これっきりになることはないから安心して。それに、できたら君こそ』


――僕を安心させて。

……くれたら嬉しいな、って。
語尾を軽く、冗談ぽくしてくれて泣きそうになった。
その後、少しだけまったく関係のない話をして。
そういえば、なぜか今まで仕事とかはあまり話題にならなかったから――なのに、なのかな――いつもよりちょっと短く、かなり気まずく通話が終わってしまった。


(……なぜか、じゃない)


泉くんが気を遣って、自然に私の話したいことを聞き出してくれて、話題をつくってくれて、スムーズに心地よく流してくれてたから。


「癒されたいです」


あんなこと、わざわざ主張した私の為に。
この煩雑で、理不尽で、それでも大したことないみたいな顔して生きていかざるを得ない世の中で、ちっとも癒しが要らない人なんかそうそういないっていうのに。

そう書いたから。
見つけてくれて――癒してくれた。

そんな人、他にいない。
少なくとも私のこれまでの人生で、そんな人はいなかった。
この先だって、もう会えないかもしれない。


(……ううん)


――彼に会うチャンスは、今だけかもしれない。

泉くんはああ言ってくれたけど、何が起きるかなんて分からない。
それだってもちろん責めることじゃないし、こんなうじうじしてる期間が長ければ尚更だ。
突然、Beside Uがサービス終了したら?
ここだけでやり取りしてる私たちは、一生連絡取れなくなるかも。


「……っ」


いつの間にか、真っ黒になったスマホの画面に恐る恐る触れると、赤くなった通知。


『あなたに招待状が届きました! 』


さっき彼から聞いたのに、心臓がドクドクとうるさい。


『――誠実なご対応をいただいているお二人の為に、お相手ともっと仲を深められる機会をご用意致しました』


――素敵な高級ホテルで、お相手とお話ししてみませんか?


『通話だけの相手と会うのは不安……そんなあなたも大丈夫! 安心してご利用いただく為に、非常時にはすぐスタッフに通報できるシステムになっています。また、今回初回になりますので、常時スタッフによるモニタリングも行っております(プライバシーには最大限の配慮をしております)』


(丁寧なようで、めちゃくちゃだ……)


常時モニタリングされて、プライバシーなんてあるはずもない。


(……でも)


「初回」だから、その方が安心というのも分かる。
こんなこと、泉くんに思うの失礼すぎるけど。
私なんかに、会ってすぐどうこうする気持ちになるはずもないけど。


『※なお、あゆな さま におかれましては、参加された場合の諸費用は 泉 さま にてご負担のお申し出がありました(参加を強制するものではありません)』


(……泉くん……)


――僕を安心させて。





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