stalking voice〜その声に囚われました~





・・・






「第2弾? 」


ものすごく急いで乾かしたせいで広がった髪を、手持ち無沙汰に何度も押さえつける。
「はや。急がなくていいのに」ってちょっと呆れた声にくすぐったそうに笑われて、見られたわけじゃないのにはねた毛先を必死にまっすぐにしようとして。


『うん。……と言うより、次のステージって感じなのかも。今回のイベントで、お互い一定以上の好意を持ってる組しか参加できないらしくて』


だって、もう次のイベントのお知らせが来るなんて予想してなかった。
しかも、セカンドステージ――その言い方も何だか変だけど、泉くんによるとそうらしい。


『判断基準が運営だからね。アンケートの内容とか、モニタリングとか。そういうので選ばれてるみたい。でも、やっぱり本人の意思は一番反映してるだろうから』


泉くんは、それ以上聞かないでくれたけど。


「……パートナー、変えたくないって書いた」


バレバレなのを黙っておく方が恥ずかしくて、せっかくスルーしてくれたことを白状した。


『分かってる。なのに、そんな言葉にされたら……試練だな』


真意を探ろうとして、やっぱりやめた――そんな溜息。


『誘われてるんだか、試されてるんだか。まあでも、どっちでもないんだろうなって今は思えてるけど? 僕だって、まだまだ男だよ? 』

「な……に、まだまだって」


歳だって、そんなに変わらない。
そんなの誰も思ってないのにおじいちゃんみたいに嘆いたのは、たぶん、冗談の中の本心。


『……っと。話す前から、怖がらせちゃダメだった。うーん、でも、そこは分かっておいてほしいんだよな。女の子をあれに誘うのに、ただいい面だけ甘く伝えるのはフェアじゃないと思うから』

「あれ……? 」


それが何を指したのかなんて、本当は分かってる。
次回のイベントをそんなふうに呼んだのが、何だか不穏で怖くてそこしか触れることができなかった。


『ん……。次のイベントね、今回と違ってアリ、らしいんだ。……その、そういうこと』

「え……っ? 」


驚きすぎて、変な声が出た。

今、何て言ったの?
聞き間違い?
それとも、言われた意味を盛大に勘違いしてる?

頭の中で一瞬で駆け巡ったくせに、そのどれでもないと結論づけるのにものすごく時間がかかったと思う。


『いや、もちろん合意のうえだよ。別に、絶対やれってわけじゃない……当たり前だけど。僕だって、さすがに会って二回目でいきなり、しかも無理やりなんてするような……』

「…………そ、そうだよね」


そのせいで誤解されたと思ったのか、そこまで一気に言ってしまおうとするのをどうにか止めた。


『…………はぁ。何言ってるんだろ。君の反応があんまりよくないから、余計にダサ……』

「ご、ごめん。だって、そんな、その……何か現実味がないっていうか」


もう一度、溜息。


『だよね。それは分かるよ。ただ、次は今日みたいな厳しい監視はないらしくて。通報できるシステムはあるみたいなんだけど、女の子には危ないし。ちょっと僕も理解しきれてなくて戸惑ってるけど……問題なのは』


わざわざそんな説明してくれる人が、どれだけいるのかな。
正直というか、本当に優しい――……。


『こんなこと言っておきながら、またあんな場所で君と二人きりになったら……無理やりじゃなくても、どうにかして君を流そうって持っていくかもしれない……持っていくだろうなってこと』





< 20 / 49 >

この作品をシェア

pagetop