stalking voice〜その声に囚われました~
とにかく、私の両親に挨拶だけは早くしたいということで。
紹介したい人がいるって言っただけで驚愕だった二人は、現れた泉くんを見て開いた口が塞がらない状態がなかなか戻ってくれなかった。
『だってねえ、ハイスペックって言うの? スパダリ? 悪いけど、今でも夢見てるみたいよ』
彼の前では言いにくかったのか、夜に電話がかかってきて、私ですらよく知らない単語を使いながら、母はそう振り返り始めた。
「……本当にそうだから、何も言えないけど。泉くんは、本当に……」
本当に、愛してくれてる。
ここまできて、もう彼の何も疑いたくない――私が、大好きだから。
『分かってるわよ。だから、夢みたいなんじゃない。あんなに格好いい男の子が、彼女の両親の前であんな宣言』
ほうっと息を吐いた母も、既に彼の虜だ。
当然と言うと悲しいけど、半信半疑というか信じられないという顔をした二人の前で、約束してくれたことを思い出すと、私だってまたドキドキする。
・・・
『出会って、まだそんなに経ってないもんね。そうじゃなくても、女性の方が不安で怖いと思う。だから、これだけは言うけど……僕は絶対、浮気とかしないよ。もししたら、って、婚前契約書いてもいい。疑うみたいで僕に悪いとか、遠慮しなくていいから。だって、しないからね』
『……そ、そんな』
『分かってる。君はそんなつもりないって。でも、ちょっとでも安心材料になるなら、それでいい。……絶対にないよ。今ここで、ご両親の前で誓えるくらいない。君がいないと、僕が幸せになれないんだ。わざわざ、自分が不幸になるような真似、しないでしょう? 男が言ったって信用できないかもしれないけど、僕がそう言ったって覚えておいて』
証人もいるからね。
そう言って約束って、手を繋いで。
どうにか頷く私の頭を、空いた手で「いいこ」っていうように撫でた――それこそ、夢かドラマでも見てるみたいな目をした、両親の前で。
・・・
『なかなかいないわよ、あんな人。何でだか分からないけど、溺愛されてるのは確かだって、お母さんも分かった。でも、あちらのご両親と会うのは緊張するわ……』
「何でだかは、私も未だに……」
顔合わせの時、卒倒しないといいけど。
とはいえ、今忠告するのも怖くて黙っておく。
『出会いがマッチングアプリっていうのも、今時よね。あんたがっていうと、意外だけど。〜とか、〜とか、そういうのでしょ? ちなみに、何て言うの? 』
「……よく知ってるね。Beside U……そんなの聞いてどうするの。登録しないでよ」
『しないわよー。気にはなるけど。でも、聞いたことないわね。ま、何にしても、会ったのが泉くんでよかった。どんなサービスだって、変な人はいるもんね』
「幸運だよね。今日はありがと」
「いいのよ」って声がものすごく幸せそうで、よかったな、幸せだなって私も嬉しくなる――確かに、電話を切る直前までそうだった。
『聞いたことないわね』
なのに、なぜかその言葉が耳から離れてくれなかった。