stalking voice〜その声に囚われました~
『もしかして、みんなに言ってるとか思ってる? 』
少し無言が続いたせいで、そんな心配をさせてしまった。
「え、と。そんなこと思ってないよ。それに、もしそうだとしても、そんなの自由……」
『そうだね。複数とやり取りしちゃいけないなんて、ルールないし。寧ろ、その方が多いのかも。でもさ、それが自由だって考えるってことは、他の子にも言ってるんだろうなって、ちょっと思ったからでしょう』
(……う……)
仰るとおり。
でも、それはね。泉くんの思うような理由じゃなくて。
「……自信がないのかも。私ひとりで、いてもらえる自信」
(……って、何を……)
重い。
私ひとりも何も、付き合ってるわけでもなければ、これを友達と言っていいのかもよく分からない。
ふと息を吐くような、鼻や喉を鳴らすような。
恐らく入らないように我慢して、そのどれにもならなかった音が聞こえて、ズキッとした。
「ご、ごめ……」
謝ったって重さは消えないけど、必死だった。
だって――嫌だ。
重いと思われるのも、面倒だと思われるのも――もう、こんなふうに話せなくなるのも。
『……かなり、堪えてるね。男が悪い、じゃなくて、自分のせいだと思ってるんだ。強いて言うなら、見る目がないのかな。でも、付き合ってみないと分からないこともあるし。あんまり自分を悪く思わないで……って、今は難しいだろうから。練習しようか』
「練習? 」
とりあえず、そんな仲じゃないとは言われなくてほっとする。
『そう。自分が誰かに好かれてるって、思える練習。少なくとも僕は、あゆなちゃんに好感をもったからこうして話してるんだよ。そして、他に連絡してる子もいない』
「それは……その、泉くんがそんな人じゃないから」
『まあね、自分をいい人間だとは思わないけど、浮気性ではないかな。でも、それ以上に』
――君が惹きつけてる、ってこと。
「そ、そんな……」
『ほーら。ダメだよ。否定しない。……あれ、練習長引きそうだね? 』
「あ、……うっ、い、意地悪! 」
(……でも、優しい)
優しくなかったら、そんな意地悪出てこない。
意地悪なのに、親切からなのに――経験に乏しい私には、ものすごく色気を孕んだ声が甘い。
『そう、意地悪なの。苛められたくなかったら、私可愛いくらい思ってなさい』
「そ、そんな無理……」
『ん? なーに』
そんなこと思えない。
でも、それ以上に。
――こんなに甘い意地悪なら、やめてほしくないからかもしれない。