stalking voice〜その声に囚われました~


顔出し・アプリサービス外の交流は、想いが深まるまで非推奨――の代わり。
サービス()のイベントが充実してる。


『……ってことらしいよ。ま、何でも抜け道ってあるからね。その気になれば、会うことはできそうだけど。あくまでも、運営会社は関知してません、かもね。でも、それだけだと、何の為のマッチングなのかって話になるから。定期的に開催してるっぽいね』


変わってる……のかな。
他に利用したことないから、よく分からないけど。
変だとしても、確かに最初だけでも実際の「出会い」に関与してるなら、その間だけでも安全なのかも。


『……で、ね。よかったら今度、参加してみない? ……まだ早いかな。でも、せっかく……』

「泉くん……?」


珍しく、途中で口ごもってる。
ごまかすには遅いねって苦笑する声で、不安になるより甘く痺れてぼんやりする私の脳って、どうかしてるのかな。


『せっかく。……相性いいんだし。数字的にも……僕の気持ち的にも。これね、結構なマッチ率? 何て言うのかな……だから、その。97%だったじゃない。僕たちの合う確率って』

「あ、うん……」


泉くんの歯切れが悪くなった理由が、何となく分かった。
ほぼ100%で相性抜群だよ、なんて、ちょっと言葉にしにくい。


『で。そのパーティーって、パーセンテージ高くないと招待されないんだって。かつ、頻繁に互いに連絡してるとか……一途かとか。詳しくは企業秘密なんだろうけど、まあ、そんな感じで、僕は招待状を手に入れたわけ。……君の分も』

「招待状……」


妖しい響きに、胸がドクンと反応する。
単語自体は何てことない。
それに反応する私が、勝手に想像を巡らせてるだけ。


『うん。この運営って、本気の付き合いを目指してるんだって。だから、何かしらの基準で招待状が届いて、相手も指定されてる。もちろん、参加して実際会ってみて何か違ったら、パートナーの解消もできるよ。あと、望まない会話や……行為とか。そういうのはすぐ通報できて、運営が飛んでくるらしいから……って、格好悪……』

「え? 」


言われたとおり、説明に聞き入ってると、一人言みたいに彼が言った。


『必死じゃん。あー、もうやだ。この好きな子口説くって感覚、すごい恥ずかしいね。付き合いたくて、付き合えたらいろいろしたくなって。その子に一生懸命、如何に優しくするかってくどくど説明してる覚えたてのガキみたい。……ないな。いくつ、僕』

「……えっと……二十………」


反応してしまう、するべき箇所がありすぎて、そんな冗談しか言えない。
ずるいって分かってるのに。だから。


『……ん……。いいんだよ、無理しなくて。気乗りしなかったら、全然逃げていいから。僕だって、これで終わりになる方が嫌だから』


ちょっと砕けた口調が、また優しく大人になってしまった。



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