聖なる夜に新しい恋を
彼女のことだから、てっきり手で受け取ると思っていた。だが、その予想は裏切られ、いちごは俺の指から彼女の口内へ。
彼女に包まれた指先は、内側の熱いほどの温もりを受け取って。わずかに触れた舌先は、自身のそれよりもとろけるほどに柔らかく、触れ合った指の先端を湿らせる。いちごを落とさないようにと去り際に挟む力を強めた唇は、まるで生き物のように指先を伝い、そして離れてゆく。──いちごを食べるだけの一連の過程は、まるでスローモーションのように目の前で行われ、当然何かしらを想起させるのは容易だった。
「ん、おいひい!ケーキの後だけど、思ってたより甘かったな」
いちごの感想を無邪気に語る彼女とは対照的に、脳内がわずかにショートしたままの俺が居て。
「……三田くん?」
「っごめんごめん、残りささっと食べちゃうね」
「ゆっくり味わって良いよ。もしかして、いちご食べちゃったのショックだった?」
「ううん全然、ちょっと考え事してただけ」
彼女の問い掛けに、己を呼び戻す。ショックか。ある意味ショックでは有ったけれども。残りのケーキをかき込みながら、そんなことを考えた。だが、このままの心では本能の奴隷になると、状況を変えて気持ちの切替えを図る。
「実は今日、紗礼さんにプレゼントがあるんだ」
「えっ!?何で!?」
「だって俺の名前は三田。俺は生まれながらの三田クロースだからね!」
「ミタくんでしょ……あほくさ……」
「まあまあ、ちょっと待ってて〜」
欲望を消し去るために、嫌に明るく振る舞った。その結果盛大にスベリながら、収納を開けてプレゼントを取り出す。用意したプレゼントはふたつ。
「ふ、ふたつもあるの?」
「うん。開けてみて」
そう伝えると、おずおずと彼女が封に手を掛けた。