ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません


「蜂屋は、あそこの席に座ってもらおう」


 担任教師が指さす先は、私が座る席の隣に向けられてる。

 横にある空席へ向けて、幼なじみの奈緒くんが歩いてきた。


 私は思わず顔を下に俯かせ、前髪で表情を隠してしまう。

 彼は何事もなかったように、隣の席にある椅子に腰を下ろす。

 私は下を向いたまま、顔を上げて彼を見ることができない。


 朝のホームルームが終わって担任教師が教室から出て行くと、お祭り騒ぎに変わる。

 奈緒くんは女子に囲まれ、質問攻めにあっていた。


 私は、その様子を直視できずに顔を下へ向けて俯いたまま。

 心の中で嫉妬の炎がメラメラしてるけど、内気な私に何ができるっていうの?


 ひさしぶりに再開した幼なじみが、隣の席にいるんだよ。

 大きな声で、私はここにいるよって伝えたい。

 小学生の時みたいに、ふざけて背後からバックハグして抱きつきたい。


 などと心の中で叫んでるけど、私は顔を俯かせたまま。

 そんなことをしてるうちに、一時間目の授業が始まるチャイムが鳴り響く。



 結局、声をかけないまま四時間目が終わって、昼休みになってしまった……



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