ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません


「俺一人で風呂に入ったら、姫乃は気に入らね~の?」


「いや、べつに……奈緒くん、ゆっくり入ってきてね……」


 一緒に入れなんて、誰も頼んでないから。

 私の妄想が暴走して、勝手に先走った発言をしちゃったよ。


「じゃあ、食事も終わったし……おばさん、風呂つかわせてもらうぜ」


「は~い」


 奈緒くんは椅子から立ち上がると、動揺する私に構わず涼しい顔で脱衣所へ向かった。

 頻繁に私の家へ出入りしてたから、間取りは完璧に覚えてるみたい。

 私は溜息をつくと、食卓テーブルに並べられた食事へ箸をつける。


「奈緒ちゃん、イケメン男子になったわね」


「……」


「他の女の子に、取られるんじゃないわよ」


「……」



 私は母の言葉を無視して、食事を続けていた。



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