ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません


 などと考えていたら、お風呂上がりの奈緒くんが姿を見せた。

 お父さんのスエットを着て、生乾きの髪にバスタオルを乗せている。


 食卓テーブルを挟み、対座して椅子に腰を下ろす。

 そして、奈緒くんは私の顔を見つめながら、ゆっくり口を開いた。


「昔みたいに髪洗ったり背中流してやったのに、なんで逃げるんだ? つまんねえ奴だな」


「なっ、ななななんでそうなるのっ!」


 突然そんなこと言われたら、動揺して上手に話せないよ!

 同じ歳の女子高生に、涼しい顔でよくそんなこと言えるね!

 ひさしぶり再開した幼なじみの奈緒くんて、子供の頃もこんな感じだったかな。


 でも……

 一緒にいて心地いい。


 しっとり濡れた髪と、肌に付く水滴。

 目の前に向かい合って座る奈緒くんのことが、嫌でも目についてしまう。


「姫乃、黙り込んでどうした? 怒ったのか?」


「いや、ちがうの……」


 幼なじみの男の子と、一緒にお風呂へ入るなんて……



 今の私には、ハードルが高すぎます……



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