ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません
私は朝食を目の前にして、長い黒髪を三つ編みに結ぶ。
「そのままのほうが、美人じゃね?」
食卓テーブルを挟んで対座していた奈緒くんが、私に言ってきた。
毛先が胸元まであるストレートの髪型のほうが、美人ですって?
内気で地味子な私を、美人とか……
「お母さん、ごめんなさい朝食はパス」
手早く三つ編みに結んで鞄を持ち、玄関でローファーの靴を履いて家を出る。
「ちょっと待てよ!」
奈緒くんも軽く朝食を済ませ、私を追いかけるように家を飛び出してきた。
「どうしたいきなり、俺なにかやらかした?」
「ちがうの奈緒くん、急な生活の変化に戸惑って……」
地味子と言われてきたけど、美人や可愛いなんて言葉とは無縁だった。
嬉しい反面、戸惑うことも多くて私の心は複雑なんだよ。
「そうだ、しばらく姫乃の家で世話になるから、よろしくな」
「えっ!?」
それって、同居になるよね……