ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません


「はっちー、おはよう」


 同じクラスの女子生徒が数人、奈緒くんに馴れ馴れしく話しかけてる。

 校内に入ると、私は内気な地味子。

 同じ教室に女の子の友人はいない。


「どうした姫乃」


 生徒玄関で棒立ちの私に、奈緒くんが声をかけてくる。


「私、先に教室へ行く……」


 そう小声で話し、私は上靴に急いで履き替えると廊下を小走りで歩き進む。

 背後の方で、私の悪口を奈緒くんにヒソヒソと話してる声が聞こえた。

 大好きな幼なじみと再会したばかりなのに、嘘を吹き込むのだけはやめてほしいな。


「私が何をしたっていうの……」


 一人で教室に入った私は、自分の席に座って下を向き顔の表情を隠す。

 周りを拒絶する、自分なりの防御策。


 朝から憂鬱な気分でいた時、背中を丸めた谷崎くんが威嚇するように歩きながら教室へ入ってきた。

 地元暴走族の総長っていう話しを聞いてから、なるべく避けてる。


 でも、相手がふざけて「地味子~っ!」と言いながら絡んでくるんだよね……



< 44 / 77 >

この作品をシェア

pagetop