ひさしぶりに再会した幼なじみが総長様だったなんて聞いてません


「和泉ちゃん、わかったから」


 しかたなく私から体を離した和泉ちゃん。

 頬をプクっと膨らませ、私に向かって可愛らしく不機嫌をアピールしてくる。


「もう、姫さま~」


 お姉ちゃんから受け継いだバイクに跨り、赤い特効服姿で鋭い目つきをする姿はここにない。

 レディースの二代目総長っていうのは、さっき上級生たちが逃げていった行動から見て学校内に知れ渡ってるのだろう。


「何か嫌なことをされたら、あたしに言ってね!」


 私に向かって可愛らしくウインクしてくるけど、和泉ちゃんの本性を知ってるだけに怖い。

 クラスメイトに嫌がらせされてる、なんて言ったら、とんでもないことになってしまうのは明白だよ。


「和泉ちゃん、ありがとう。だいじょうぶだから」


 私が中1で、和泉ちゃんが中2の頃からの付き合い。

 お姉ちゃんと一緒にレディース暴走族として行動してたから、仲良く会話をすることも多かった。


 あの時から、私を「姫さま」って呼んでたな。


 まあ、お姉ちゃんの名前も姫花で「姫さま」ってみんなから慕われてたし。

 初代総長の妹ってことで、私は一目置かれてたからね……



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