いじっぱり姫の青葉色は。



 行く場所を決められなくても、やつらと過ごす時間が意外にも楽しいのは不幸中の幸い。学校の外ではお上品な言葉を意識しなくてもいいってのが楽だし。


 羨ましかったあの光景に自分も馴染めていると思うと、雀の涙くらいには桐山に絡まれて良かったと思えてくる。


 絶対に口には出さないけど、頬がゆるむのは美味し過ぎるパンケーキのおかげだけじゃない。絶対に死んでも教えてやらないけど。


「ふふっ、気に入ってくれたんだね~。これ作ったの、薫だよ!」

「あの顔でこんなに甘いパンケーキを作ってんの? ホイップとフルーツをいい感じに盛り付けてんの?……ぷぷっ」

「あ? 自腹で食べるって?」

「青葉薫様はなんでもできてすごいなって話してました」

「よろしい」


 わしゃりと頭にのしかかる重み。眼前に寄せられた満足気な笑顔は、筋の通った鼻をひん曲げたくなるくらい憎たらしい。


 認めるのはすっごい(しゃく)だけど、青葉薫が“なんでもできてすごい”のはほんとのことだ。


 驚くべきことに授業は真面目に受けていて、先生にあてられたときも必ず正解している。国語の文章読み上げで噛むことなく読み進めるのはまだわかるとしても、英語の長文読み上げで発音良く完璧に読んでいたのは気に食わない。



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