いじっぱり姫の青葉色は。



 当たり前にふわふわの甘い食感はなく、青葉薫はショックを受けている様子。イケメンの絶望顔、おもしろ過ぎる。


 口からはみ出るくらいの大量の生クリームが私を癒してくれるから、倍で幸せだ。


 まぁまぁ、安心して。私は一度だけ青葉薫のアホ面を見てみたかっただけで、2回目はちゃんと分けてあげるから。じゃないと自分でパンケーキ代を払わなきゃいけなくなるし。


 ほら、口を開けて。あー


「ん。んぅ……?」


 私の口の端っこ。やけに熱を持っているそれは、私の口元をぺろりと濡らす。


 続いて感じたのは……ふにっとやわらかい、ほのかなぬくもり。


 つい数日前に覚えた大人な香りが、鼻先と心臓を不意打ちでくすぐった。


 初めての感覚に頭が真っ白。しかし、私の瞳とかち合ったのは煌めいている意地悪な黒で。


「こんなんじゃ足りねーな」


 足りないと言いつつも満ちた表情をしている目の前の男。さすが、性格底辺の動く美術品。


 男にしては長いまつ毛が、しぱしぱと私へ微風をぶつける。



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