いじっぱり姫の青葉色は。
「考え事? 随分と余裕があるんだね。さすがは『守月』の姫ってところかな。まぁそれも、その綺麗な顔に傷がつけられたらなくなるだろうけど」
空いている左手をズボンのポケットに突っ込んだかと思うと、細長いなにかを私の眼前に突き付けた。
カチッカチッと軽い音が鳴り、長さが増したそれ。銀色で光を反射していて、先端が尖っているアブナイモノ。
いやいやいや、最近の不良はカッターを常備してんの?怖すぎるでしょ。
若者がそんなことするなんて、日本の治安が大心配だよ私は。
っていうか、顔に傷をつけるって?マジでまずいじゃん!?
下っ端相手だから大丈夫だって油断してたよ!!
「ま、まぁまぁ。とりあえず落ち着きましょう? ね?」
相手に言い聞かせるように。そして自分にも暗示をかけるように。
にこっと形のいい笑みを浮かべつつ、一つ深呼吸をする。
ようやく声を出した私に、機嫌が良くなったからか手首へかかっていた力が僅かに緩んだ。
よし、いける。