いじっぱり姫の青葉色は。
「そうだよ~。俺たちは友情をはぐくんでるの」
「いやいや、育んでないし! あんたが口を挟むとややこしくなるから引っ込んでろ!」
「激しめのツンデレって可愛いよね」
「急になんの話? 話が噛み合わなくて怖いんだけど?」
くくくっと、桐山と対称的な笑い方をしているのは私の後ろの席に座っていた青葉薫。一番遠くでぼそりと勘違いを零したやつ。
桐山がダル絡みしてきたときといい、ひとしきり笑い終わった今といい、目に録画機能でもあるのかと疑うくらいに瞬きもせずこちらを見つめてくる。艶のある黒髪と底のない闇みたいな瞳が、なおさらカメラを彷彿させた。
視線を長く合わせてみても、なにを考えてんのか読めない。不気味なやつだ。
女子たちの間ではそれが“クールでミステリアス”とかいう、都合のいい言葉に変換されているらしい。私にはよくわからん。
「流星ってばなんでこんな女に懐いてんの? 口悪いし、貧相じゃん」
え?急に悪口?なんで?どっちが口悪いって?
ってか、なにを見て貧相だって言ってんの?
ちょっと。私の本体を見るな、本体を。
私の脱いだところ、見たことないくせに!かと言って、着やせするタイプじゃないけどさ!
人間、中身の深いところが大事なんだよ。表面だけを見ての決めつけは良くない。