【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
婚約破棄されましたけど、モフモフ愛でてもいいですか?
婚約者としての最後のお茶会。
耳が痛くなりそうなほどの沈黙。
今となってはメルシアの元婚約者であるランティスは、一言も言葉を発さずに、音もなく優雅にティーカップをソーサーに置いた。
(嫌われている上に、なんの旨味もない貧乏伯爵家の令嬢……。いくら、お父様同士が親友だからって、嫌だったよね)
婚約破棄の申し出をメルシアにしてから、指先を組んでは、珍しく落ち着かない様子だったランティスが、ようやくその形の良い唇を震わせた。
「…………では、これで失礼する」
「はい、わかりました」
メルシアが、物分かりよく返答すると、ランティスは、なぜか傷ついたように、縋るようにメルシアの瞳を見た。
メルシアは、そのことに気が付かなくても、周りからはそう見えただろう。
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