【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「――――それに、猶予があまりないのかもしれない」
「……どういう」
「明日から、騎士団の通常業務に復帰する。きな臭いからな……」
「危険なこと、しないでほしいです……」
ほほ笑んだランティス。もちろん、メルシアだって騎士団の仕事が危険と隣り合わせだってことくらいは、理解している。
「休暇を満喫した。今まで、ほとんど休んだことがなかったからな。明日から、元気に仕事が出来そうだ」
ランティスが笑う。まるで、メルシアに心配をかけないように笑っているようにも見える。
(騎士様を好きになるってことは、楽しいことばかりじゃないんだよね……)
今までだって、ランティスが危険な任務をしているのではないかと、心配しなかったわけではない。
けれど、距離が近くなって、ランティスの口から騎士の仕事について聞く機会が増えれば、そして待つという立場になれば、メルシアが抱える不安は以前より大きい。
「待っていますから」
「ああ、待っていて欲しい。無事に帰るから、心配なんて」
「……しますよ。心配」
軽く目を見開くランティス。
どちらかというと、ランティスは強すぎて、あまり人にそんな心配をされることがない。
だから、今まで誰かに「心配だ」とストレートに言われることは、あまりなかった。
「そうか……。なら、万全を期して任務に臨むようにしよう」
「そうしてください」
ランティスは、もう一度ほほ笑むと、メルシアの頭をそっと撫でた。