【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
先日、命を救われた、ベルトルト・シグナーだろうか。
そんなことを思った瞬間、目の前で訓練の相手をしている、ベルトルトのことがたまらなく許しがたい気持ちになってしまい、ランティスは本気で打ち込んでしまった。
「ちょ?!」
ベルトルトは、軽く瞠目しながらも、その剣を軽い力でさばいた。
何でもありの戦場であれば、たぶんランティスはベルトルトに負けない。
彼の剣は、良くも悪くも王立騎士流の美しいものだから。
だが、ルールありの訓練では、ベルトルトに軍配が上がることも多い。
「――――すまん、ベルトルト。本気を出すから、付き合ってくれ」
「えっ、ええ?! この訓練のあと、書類仕事が山のように」
「ちゃんとやる……お前が俺に勝てたらな?」
「――――これっぽっちも、やる気ないですよね?!」
ランティスが、横目に見たメルシアは、頬を紅潮させ、思いっきり手を振りながらこちらに声援を送っていた。時々「素敵!」「騎士様がカッコよすぎるぅ!!」という幸せいっぱいの声が聞こえてくる。