【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。


 お互いが違った意味で身もだえていたが、ふと真顔になったランティスがメルシアを真っすぐ見つめる。

「メルシア……俺は、どれくらい眠っていた?」
「――――一週間」
「そうか……。それで、これはどういうことだ?」
「えっ」

 ランティスが、怒っているのをメルシアは初めて見た。
 興味が薄そうな様子を、怒っているのではないかと思っていたけれど、あれは単に無表情なだけだった。そのことが分かってしまうくらい、今日のランティスは本当に怒っている。

「えっ、あの。ごめんなさ……」
「……? どうして、メルシアが謝るんだ」
「え?」
「俺は、自分自身に怒っている」

 ランティスが、ほほ笑んだ。でも、それはきっと、誰が見ても無理して微笑んだようにしか見えなかっただろう。

「――――メルシアは」

 ベッドから起き上がったランティスは、大きくふらついた。
 それを支えようとしたメルシアだったが、その手は途中で止まってしまう。
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