【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「メルシアは……」
その指先が、メルシアの頬を壊れやすい宝物でも触れるように、スルスルと滑り落ちる。
寄せられた眉と、不自然にほほ笑もうとして失敗したような唇。
「どうして、こんなことを」
「ランティス様」
ランティスの魔力には、メルシアの魔力が混ざりこんでいる。
それは、きっとメルシアにとって、あまり良いことではない。
何が起こったのか把握しきれないランティスにも、その事だけははっきりとわかる。
「いや……ですよね」
「――――むしろ俺は幸せだが」
「えぇ?」
「失言だ」
メルシアの魔力が体内にあること自体は、ランティスにとって不快ではない。
不快なはずがない。
ただ、ランティスが気遣っているのはメルシアの体と魔力だ。