【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「――――でも、メルメルの前で話をするのは、ちょっとかわいそうだわ」
「先ほどから、メルメルとは……」
「メルシア・メルセンヌだから、略してメルメル。可愛いでしょ?」
「…………」
「心の狭い男は、嫌われるわ」
「く……」
にこりと笑った顔は、やはり信用ならないという印象をひとに与える。
その時点で、もう心理戦では負けているも同然だろう。
「は……。そうだな。たぶん、酷な選択になるんだろう?」
ランティスは、メルシアにちらりと視線を向ける。
メルシアは、悪いことをしてばれてしまった子どものようにシュンとしている。
「――――だが、一緒に聞く」
ハッとしたように、メルシアが顔を上げてランティスをじっと見つめた。
そうだ、とランティスは本日初めてまともな微笑みを浮かべた。
「今まで、そうやってメルシアを守ろうとしたことも、距離をとろうとあがいたことも、結局遠回りしてお互いを傷つけただけだ」
「ランティス様……」