【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
パチンッと二人の間で弾けた魔力。
あれは、ランティスの魔力が、メルシアに流れ込んで起こったのだろう。
「同じ魔力が入っているせいで、親和性が高い。……それを利用して、メルメルの魔力をフェイアード卿に流し込んだの」
「そうか……」
「でも、一時的だわ」
「そうだろうな。どれくらいもつ?」
アイリスは、小首を傾げた。
それすらも、妖艶な印象のアイリスがすれば、どこかあざとい。
「ん? むしろ、結果が出たら教えて。研究の一助にする」
「そうか……」
それだけ言うと、ランティスは、ようやく思案げな表情を緩める。
「世話になったな」
「ええ、とりあえず命の危機は脱したわ。帰るわね」
「ああ。この恩は」
「あなたたちって、お堅いわよね? いいの、私は魔術の深淵に近づいた。それでおあいこだわ。さ、行くわよ、シン」
姉が弟にそうするように、シンと呼ばれた少年に、手が差し伸べられる。
同じ髪色の二人は、こうしていると本当に姉弟のようだ。
「……え?」
シンが、呆気に取られたようにアイリスを見上げる。
「え、じゃないの。同じ髪色のよしみで、弟子にしてあげるって言ってるの」
「は? 何企んで」
「そうね。理由がいるのなら、黒髪は珍しいから、研究対象になって?」
「……え?」
その手が、半ば強引に繋がれるのを、嬉しそうに見つめるメルシア。少し頬が赤らんだシン。
二人は、仲良い姉弟のように、ランティスとメルシアの前から消えた。