【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「え? あの……」
おずおずと開けたランティスの口に、メルシアが匙を入れる。パクリと、その匙が、形の良い唇の中に含まれた時、ようやくメルシアは、我に帰った。
「っ……」
孤児院の子どもたちをお世話する時のようにしてしまったことに、今さらながら気がついてメルシアは赤面する。
「もうひと口」
メルシアが、恥ずかしがったことが伝わってしまったのだろう。
動揺していたランティスは、逆に冷静になったようだ。少し意地悪な笑みを向けてくる。
「あっ、あの。近いです……」
「そう? でも、これくらい近くないと食べられない」
「あぅ」
パクリと残り3口で、ごく少量だけ盛り付けていたお粥は無くなった。
「終わりましたよ?」
「ああ、残念だな」
「え? あまりたくさん初めから食べるのは」
「そういう意味じゃない。なぜかな、むしろ狼姿の時の方が、気持ちが伝わっている気がするのは」