【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 ポスッと、ランティスがメルシアの肩に額を当てた。そこで、はたとランティスは、一週間寝たきりだったことを思い出した。

「……ああ、ごめん。風呂にも入ってないのに」
「うん、石鹸の香りだと思っていたこれ、ランティス様の魔力の香りだったんですね」
「え?」
「……ランティス様の魔力の中に、私の魔力がある。私の魔力の中に、ランティス様の魔力があるんです」

 メルシアが、ランティスに擦り寄る。
 まるで、狼が仲間に擦り寄るようだ。

 これでは、いつもと逆ではないかと、動揺を隠せないランティスには、気がつかないままのメルシア。

「私は、どんな姿のランティス様でも、一緒にいたい。それは変わらないです」
「メルシア?」
「もし、逆に私が狼になったら、ランティス様はどうしますか?」

 ランティスは思う。
 二人で、野を駆け回るのもいい、と。
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