【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「可愛いだろうから、誰の目にも触れさせたくないな」
「あは。でも、騎士でいて欲しいから、ここで待っていても、いいですか?」
「……光魔法」
「はい。使えなくなっちゃいました。今のところ」
「すまな……」
ランティスの言葉を遮るように、メルシアが小さな手をその口に当てる。
その手を大きな手が包み込み、優しく退けた。
「ダメですよ?」
「そうか。……それなら、俺と」
月明かりだけが、部屋を淡く照らしているはずなのに、白銀の髪は、まぶしいくらい煌めいている。
30分など、とうにすぎても、ランティスは人の姿のままだ。今は、今だけは。
柔らかく抱きしめられたメルシアに、優しい口づけが落ちてくる。
「ずっと、一緒にいてほしい。こんな俺でもいいのなら」
「はい、喜んで」
幸せだ。メルシアは、素直にそれだけを思う。
色濃かったランティスの中にあったメルシアの魔力は、徐々に薄らいで、それでも消えることがなかった。