【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
不思議そうに首を傾けたマチルダ。
その長い黒髪が、サラリと揺れる。
(そういえば、シンと上級魔道士アイリスさんも黒髪だけど、この三人以外、黒髪なんて見かけたことない)
「…………まぁ、いいわ。首を突っ込まない方が、長生きできるって話は、世の中に溢れているもの」
微笑みを浮かべてつぶやいたマチルダ。
表情と言葉が、どこかチグハグだ。
(そういえば、マチルダのこと、ほとんど知らない)
黒髪に生まれると、生まれつき魔力がものすごく強い。それくらいの認識しかないメルシア。
一方、今日は自分の意思でラティの姿になってついて来たランティスは、どこか思案げだ。
「ねっ、もっと遊んで!」
「今度は、僕だぞ!」
「かわいい!」
そんな、ランティスの上には、交互に子ども達が三人乗っている。特に怒る様子も嫌がる様子もなく、じっとしている。
鍛えた体は、狼になっても有効なのだろうか。
そんなことを考えながら、ランティスに一気に五人で乗ろうとした子ども達を、メルシアはそっと止めたのだった。