【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「お疲れになったのではないですか? ランティス様」
「ワフ……」
結局、大人しく可愛い白い犬に夢中になってしまった子ども達は、狼姿のランティスに、最終的には、ほぼ全員が乗り上げた。メルシアには、止めるすべがなかった。
フェイアード侯爵邸に帰ってきた二人。
ランティスの体力は、ようやく元に戻りつつあり、復帰しようとした矢先にメルシアが襲われた関係で、結局予定通り取得してしまった長期休暇も、今日で終わりだ。
いったん、メルセンヌ伯爵家に帰ったメルシアだが、一人にしておくのは心配だ、と領地復興に尽力する父母の意向により、フェイアード侯爵家にお世話になっている。
ランティスの父は、騎士団長引退後は領地に戻って妻と暮らしている。
つまり、フェイアード侯爵家には、今はランティスと、メルシアをなぜか女主人として扱い始めてしまった従業員たちしかいない。
「ずっと、ここにいて?」
「さすがに……まだ結婚もしていないですから」
「じゃあ、すぐに結婚して?」
狼から人間の姿になったとたん、甘えるようにメルシアの首元に顔をうずめたまま、ランティスがそんなことを言う。