【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
執事のハイネスも、実は元騎士だったということを聞いて、メルシアは驚いた。
子ども時代、ランティスに剣の指南をしていたのも、ハイネスらしい。
(こ、子ども時代の、推しのエピソード……)
思わず生唾を飲み込んでしまったメルシア。肖像画を見ておぼろげに思い出した、幼い日のランティス。どんな子どもだったのだろうか。
メルシアが、ランティスの子ども時代のことを聞いたら、執事ハイネスは、喜んで教えてくれそうではある。
「なんだか、嬉しそうなところ悪いが」
「ランティス様?」
「本を読んでみてどうだったか、意見を聞かせてもらえるか?」
ようやく読むことが出来たフェイアード侯爵家に関する本。
建国時代から、王に仕えるフェイアード侯爵家は、貴族の中で少し特殊な立ち位置だ。
公爵家が、王家のスペアであり、何度も王妃を輩出しているのに対し、フェイアード侯爵家は、王家の姫が降嫁することはあっても、王妃を輩出したことは一度もない。
(その理由が、ランティス様が狼になったことと関係あるのだとすれば……)
フェイアード侯爵家の人間に稀に生まれる、狼になる子ども。
フェイアード侯爵家の人間には、王族の血が流れている。けれど、代々の国王陛下にはフェイアード侯爵家の血は流れていない。