【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
箱推しの騎士団
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翌朝、騎士団に久しぶりに出勤するランティスを、メルシアは見送っていた。
「ランティス様、いってらっしゃい」
「……ああ。行ってくる」
メルシアに満面の笑みを向けたのも束の間、厳しく冷たい表情になるランティス。
(ランティス様。最近は、いつも微笑んでいらしたけれど……。王国民全てを守ると決意したようなその表情。王国の至宝を今すぐ、王都の皆さんと分かち合いたい)
それなのに、少しだけ唇を歪めて、振り返ると、メルシアの両肩にランティスは、手を置いた。
「ランティス様?」
「……こんなに仕事に行きたくないなんて、初めてだ」
ランティスは、その瞼と長い白銀のまつ毛で満月のような瞳を隠し、メルシアの額に口づけをした。