【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
厨房に飛び込んだメルシアと、心得たように後に従う執事ハイネス。
今日作るのは、アイスボックスクッキーだ。
すでに仕込んである、細長いクッキーの種を、切り分けてオーブンへ入れる。
これなら、たくさん焼いても、公開訓練の時間には間に合うに違いない。
「飲み物は、レモネードがいいかな?」
「それがよろしいと思います」
少しだけ、ミントシロップを入れるとレモンの香りとともに爽やかに香る。
きっと、疲れた体に染み渡るに違いない。
「……ランティス様、喜んでくださるかしら。いいえ、受け取ってもらえるだけで、幸せなのだけれど」
「――――この上なく、お喜びになるでしょう」
「そ、そうかな? ありがとうございます。ハイネスさん」
クッキーが焼き上がり、粗熱をとっている間に、メルシアは侍女たちにクローゼットルームへ連れていかれた。さすがに、騎士団の公開訓練の見学だから、ドレスという選択肢はない。けれど、可愛らしい白いワンピースに着替えさせられた。
身に着けるネックレスは、金色の細いチェーンに小さな透明のキラキラ光る宝石がついている。
まるで、ランティスのような色合い。そっと、ネックレスをつまんで窓から差し込む光に透かす。