【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

「メルメルー!!」

 今までにない居心地の悪さを感じていた時、黒髪を高くポニーテールを揺らしながら、一人の女性がメルシアに走り寄って来た。

「アイリスさん」
「先日あったばかりなのに、なんだか久しぶりな気がするね? 元気そうで何より。…………あっ、ご無沙汰しております。ハイネス卿!」
「え? 二人はお知り合いなの」
「知り合いも何も……」
「お久しぶりです、アイリス様。先日は、ランティス様を救っていただいて深く感謝しております」
「えっ……。ハイネス卿?」

 なぜかうろたえてしまったアイリス。
 いつも、どこか軽薄な印象をひとに与えて、飄々としている印象のアイリス。
 だが、ハイネスを前にしたアイリスは、なぜか所在なさげだ。

「――――護衛任務中ですので」
「……相変わらず完璧主義者ですよね。でも、私のことを様ってつけるのはやめてもらえません? ハイネス卿からそんな呼び方、さすがにむず痒い」
「かしこまりました……。アイリス殿とお呼びしましょう」

 二人の姿を交互に見ながら、メルシアは首をかしげるのだった。
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